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水彩画紀行  スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

水彩画紀行 スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

カスピ海美人に招待される

長い滞在なので、小さな電子ピアノを買った。

まず和音を弾く。

バッハの練習曲も少しづつ勘が戻ってきた。

昼まで、そんなことをして、ようやく行動開始。



カスピ海に面した「三日月湾」という名の浜辺がある。

数kmにわたって、白い壁の建物が並んでいる。

冷えたビールと焼肉を出す海の家兼レストラン。

あの奔放なカスピ海美人たちが泳ぐ時にはどこまで奔放なものとなるか?

寒風吹き荒ぶ頃より、「無邪気な」邪念を抱いていた。

日差しが強く、9時ごろまで明るいので夕方から出かけようとしていたが、

ロシア語の先生をしているバクー大学の女子大生がやってきた。

黒目がぱっちりとした、おかっぱのカスピ海美人。

今日は両親がいず、いとこ夫婦など若いひとばかりで食事したり泳いだりする。

泳ぎたいと言ってからこれから、一緒に来ないかとの誘い。

カスピ海で、自分の家のそばの海が一番綺麗と言う。

初期の目的にもやや心残りがあったが、なんだか楽しそうなので行ってみることに。

わずか1000円の40cmほどの特大のケーキとワインを持参。

バクー郊外の海のそばのプロムナードに沿ったリゾートのような家々の中の一軒。

無花果と葡萄の下のテーブルでまづは乾杯!

茄子を薄切りにして揚げて重ねてそれにトマトを炒めて乗せた野菜料理。

「アゼル料理?」 

「インターナショナル料理!」

それに美味しい味付けの豆や野菜の山盛りのサラダ。

「ヤー、リューブリュー、エタ、オーチョン、フクースナヤ、イエーダ! 」

「このとても美味しい料理が好きです。」

みんなが、笑って答える。

「スパシーバ(ありがとう)」

通じた!

かたことの会話が楽しい夕暮れ。

酒を飲まないナターシャに代わって妹がめっぽう強い。

一本空になる頃にはいろんな話が飛び交い始め、笑い転げる。


「日本の女性は家に芸者を連れて帰っても怒らないと聞いたけど本当か?」

「なぐられるか殺される」

「結婚して手をつなぐ夫は日本にはいない。

 ここの男の気配りは感心する。

 アゼルの女性はそうしないとどこかへ飛んでいってしまうからと聞いたが本当か?」

「本当だ。アゼルの女性は強いのよ。」とはナターシャ。



食事のあと夕暮れのカスピ海で初めて泳いだ。

塩分が少ないせいか、あまり身体が浮かない。

けど、ベタベタしないので、海の風に乾いてもさらさらと気持ち良い。

チョウザメは人間を食べないのかなあ

とのんびり思ったりしながら波間にしばし浮かんでいた。



そのあと部屋に戻って彼らの好きなトランプ遊び。

この国の人は貧しくテレビも番組が乏しいせいか、

室内、戸外でいろんなゲームに興じている。

はじめ神経衰弱という同じカードを当てるゲーム。

やはり若い女子大生の妹が記憶力がいい。

そういえば、このゲームは、何でも熱心になる私の娘と母親が強かった。

そうこうするうちに10時半。

バス停まで送ってくれて初めて郊外バスに乗った。

これまで、恐ろしくて乗れなかったもの。

ときにはラジエターがむき出しになっているオンボロバス。

車検などあって無きがごとし。

給与が少ないので、お金をだせば何でも通る国柄。

ガタコト、ガタゴト言わせながら、舗装されていない夜道を飛ばすこと飛ばすこと。

恐ろしいので目をつむっていたら、いつしか居眠り、

あっと言う間に 見覚えのある街に着いた。

30分乗った代金は25円。

明日から、縦横に走るバスに乗って遠出してみよう。

着飾った乙女たちと若者の嬌声がまだあふれていた遊園地を通りぬけ

カスピ海の潮の匂いを感じながら酔いをさまして帰路についた。

         黄昏れて人みな優し夏衣



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